コウモリってこんな動物です!不思議な生態、特徴を徹底解説
2021.07.27更新
コウモリ駆除の専門家が丁寧に教えます!
「コウモリってどんな動物なんだろう…?」
「家の近くでよく見るんだけど、意外と知らないなあ。」
夕暮れの空をひらひらと飛ぶコウモリ。
みなさんも会社や学校の帰り道に見たことがあるのではないでしょうか?
コウモリは誰もが見たことがあるほど身近な動物ですが、実はとっても不思議で、おもしろい生き物です。
自力で飛べる哺乳類はコウモリだけですし、最近の研究では最先端のテクノロジーにも負けない能力を持っていることが分かっています。
真っ暗闇でも障害物にぶつかることなく飛んでエサを捕まえますが、コウモリはほとんど目が見えません。
どうやって獲物を捕まえているのでしょうか?
この記事ではそんな不思議でおもしろい、コウモリの生態について紹介していきたいと思います。
また、コウモリはおもしろい動物である一方、人間の家に集団で住み着いて大量のフンをすることから、しばしば害獣とされてしまうこともあります。
コウモリを害獣としないためにも、コウモリの被害を予防する方法も合わせて紹介していきたいと思います。
ぜひ最後までお付き合いください!
コウモリってそもそもどんな動物?不思議な生態に迫ります
日本には34種類のコウモリが生息しているとされ、都会でも夕方から夜にかけてその姿を見ることができます。
意外にも身近な動物であるコウモリですが、その生態についてはあまり詳しく知られていません。
- なぜ暗闇で飛べるのか?
- なぜ逆さまなのか?
- どんな体つきをしているのか?
- どうやって暗闇で飛んでいるのか?
この章では、そんな知られざるコウモリの生態に迫ります。
唯一の飛べる哺乳類!それがコウモリです
コウモリは空を飛べることから鳥の仲間だと思われる方も多いのですが、実は私たち人間と同じ哺乳類です。
その哺乳類の中で飛ぶことのできる動物はコウモリしかいません。
ムササビやモモンガも飛ぶことができますが、彼らの飛行は ”滑空(かっくう)飛行” と呼ばれるもの。
高いところから『少しずつ落ちながら』前に進んでいく飛び方です。
紙飛行機をイメージするとわかりやすいかもしれません。
コウモリは鳥のように羽をはばたかせて風をキャッチして自分の力で飛ぶことができます。
このようなことができるのは、哺乳類の中ではコウモリだけなんですね。
そんなコウモリの羽ですが、実は羽に見えている部分は『前足』なんです。
コウモリの骨格を見てみましょう。
指の骨が5本あるのが分かるでしょうか?
コウモリには指があり、指と指の間に『飛膜(ひまく)』という伸び縮みする膜があります。
この飛膜が翼の役割をすることで空を飛ぶことができるんですね。
あの複雑で不規則な飛び方も、飛膜を指で操れるコウモリだからできる技です。
ちなみにこの前足には、人間でいう親指があります。
排泄時などは逆さまの状態から親指でぶら下がる形に体制を変えて用を足します。
コウモリが逆さまなのは『そのほうが飛びやすくて安全』だから!
コウモリといえば写真のような逆さまのイメージがあると思いますが、逆さまなのにも理由があります。
理由は大きく分けると二つ。
一つ目は『逆さまの方が飛ぶのに都合がいい』ということです。
高いところから逆さまにぶら下がっていれば足を放すだけですぐに飛行体制に入れますし、落ちる力を利用して揚力(ようりょく)を得ることもできます。
(揚力とは飛ぶために必要な力のことで、鳥も飛行機もこの揚力によって空を飛んでいます。
ここでは簡単に身体を上に持ち上げる力、と考えておきましょう。)
また、コウモリは前足で飛ぶ能力を手に入れた代わりに、後ろ足は極端に弱くなっています。
ぶら下がる以外の運動(歩いたり、立ったり、飛び跳ねたり)はできませんし、基本的には鳥のように地上から飛び立つこともできません。
コウモリにとっては、高いところからぶら下がっていた方が、何かと好都合というわけです。
もう一つの理由が『天敵に襲われにくく、襲われた時も逃げやすい』ということ。
次の画像のように逆さまにとまって翼を閉じていると、枯葉のように見えますよね。
天敵の目をあざむくことができるので、襲われにくくなるわけです。
一方洞窟などでは、天井にとまることでヘビに襲われにくくすることができます。
万が一襲われても足を離すだけで飛行体勢に入れるので、すぐに逃げることができるんです。
コウモリは高いところに逆さまにとまることで、飛びやすさと安全の両方を得ているのですね。
かなり正確なレーダー。その実力は戦闘機並!?
コウモリの多くは、天敵や餌を獲りあうライバルの少ない夜に活動します。
ですが夜行性のコウモリはほとんど目が見えません。
つまりコウモリは、目がほとんど見えないのに真っ暗闇の中を飛んでいるということになります。どうして障害物にぶつかることなく、さらに餌まで獲れるのでしょうか?
その秘密は、コウモリの持つとても正確なレーダーにあります。
ほとんどのコウモリは ”反響定位(はんきょうていい)” というものを行うことで、自分と障害物の位置と距離をつかんでいます。
反響定位とは、自分の出した音が何かにぶつかって返ってきたとき、その方向とタイムラグで自分の位置を知ることです。
イメージしづらいと思うので、『やまびこ』で説明しましょう。
山の上から「やっほー!」と叫んだ場合、何秒か遅れて「やっほー」と聞こえますよね。
私たちはこのやまびこの音やタイムラグからは何も読み取ることができませんが、コウモリは本能的に、自分のいる場所から音を跳ね返した物までの距離、その方向が分かるのです。
飛行機のレーダーや、漁師の方が使う魚群探知機、船に搭載されているソナーもこの反響定位を利用した機械ですね。
コウモリは口や鼻から超音波を出し、跳ね返ってきた音を耳で聞くことでこのような反響定位を行なっています。
コウモリの反響定位は戦闘機のレーダーにも負けないと言われていて、その力は餌を獲るときにも発揮されます。
同志社大学と東京大学の合同研究チームによると、コウモリは餌を獲るとき、今追いかけている獲物だけでなく、次の獲物の位置も先読みして飛行ルートを決めているそうです。
これは正確な反響定位を自由自在に使いこなすことのできる、コウモリだけができる技でしょう。
(参考:同志社大学 | コウモリが超音波で行く先を“先読み”し、ルート選択を行うことを発見)
また、日本にはいませんが水面のわずかな振動を感知して水中の魚を捕える「ウオクイコウモリ」というコウモリもいます。
コウモリは反響定位によって、私たち以上に色々なものが「見えている」のかもしれませんね。
コウモリは進化上手!環境に適応して980種類以上!
コウモリは世界中さまざまな環境に適応して進化を遂げ、その種類は980種類以上と言われています。
コウモリは大きく分けると
- オオコウモリ
- ココウモリ
の二つに分けられます。
オオコウモリは翼を広げた大きさが2mにもなるかなり大きなコウモリで、日本には動物園以外だと小笠原諸島や南西諸島にしか生息していません。
オオコウモリは先ほど紹介した反響定位(はんきょうていい)を行わず、視覚で野菜や果物などを食べます。
吸血鬼や悪魔を連想させる見た目をしていますが、果物が大好物というギャップがおもしろいコウモリです。
一方、ココウモリはその名の通り小型のコウモリで、反響定位を行うものがほとんどです。
多くは虫を食べますが、肉食のものや花の蜜を吸うもの、吸血するものもいます(ちなみに吸血コウモリは日本にはいませんのでご安心ください)。
※コウモリの種類についてはこちらの記事でより詳しく解説しています。気になる方はぜひご覧くださいね。
▶︎日本に生息するコウモリの種類と特徴を見る
私たち日本人にいちばん身近なものは、ココウモリに分類される「アブラコウモリ」、別名を「イエコウモリ」というコウモリです。
ここからは、アブラコウモリの生態を詳しく解説していきます。
日本でいちばん身近なコウモリは「アブラコウモリ」
アブラコウモリはイエコウモリという別名の通り、人間の家をすみかとするコウモリです。
日本で人間の家に住むコウモリはこのアブラコウモリだけ。私たちにとっていちばん身近なコウモリと言えます。
ここからはそんなアブラコウモリについて詳しくみていきましょう。
アブラコウモリはどんな身体をしているの?
アブラコウモリは非常に小型のコウモリです。
体長は4~6cm、体重は5g〜10gほど。1円玉1枚が1gなので、その体重の軽さがわかると思います。
羽を広げると約20cmほどの大きさです。
体毛は黒い褐色や灰褐色、茶色であることが多いようです。
アブラコウモリはどこに住んでいるの?
アブラコウモリは、市街地の民家を中心にさまざまな場所に住みついています。
東京など都市部にも数多く生息しているため、夕方には空を飛んでいるのを目撃するケースもかなり多いです。
民家の少ない山間部に住みつくことはほとんど無いようで、自然の洞窟などに住んでいた記録もかなり少ないのだとか。
アブラコウモリは家の中でも、下記のような場所によく住み着きます。
- 瓦の下
- 羽目板と壁の間
- 戸袋の中
- 天井裏
- 換気口
コウモリの巣についてはこちらの記事でより詳しく解説しているので、気になる方はご参照くださいね。
▶︎コウモリの巣が屋根裏に!?作られやすい場所とプロが教える対処法
また、コウモリは数頭の家族または数十頭の集団で住みつくことが多いです。
暗くなってから行動する夜行性で、日没後の2時間に最も活発に活動します。
アブラコウモリは何を食べているの?
アブラコウモリのおもな餌は小さな昆虫類です。
具体的には、
- カ
- ユスリカ
- ガ
- ヨコバイ
などです。
東京などの都市部では、汚れた川に大量発生するユスリカがコウモリの重要な食物となっています。
このほか、ウンカや甲虫などを食べることも。
街灯など、虫の集まる場所をヒラヒラと不規則に飛び回り、口で直接、昆虫を捕まえます。
一説によると、その高い飛行能力とこの記事でも紹介した正確な反響定位(はんきょうていい)によって、一晩に300匹(!)もの虫を食べるそうです。
これだけ食べるのですからたくさん出るのが…そうです。フンです。
このコウモリのフンが、しばしば問題となることがあります。フンについては次の項で詳しく紹介していきましょう。
アブラコウモリのフンってどんな感じなの?
アブラコウモリのフンは5mm〜10mmほどの大きさです。
ネズミのフンとよく似ていますが、アブラコウモリは昆虫しか食べないのでもろく崩れやすいのが特徴です。(※コウモリのフンの見分け方・対処法はこちらの記事で解説しています)
アブラコウモリは先にも紹介したように、一晩で300匹もの虫を食べる超大食い。
身体を軽く保てるよう消化も早いので、毎日すごい量のフンをします。
さらに。
先にもお伝えした通り、アブラコウモリは集団で家に住み着くので、とんでもない量のフンをされることになります…。考えただけでも目眩がしますね。
大量のフンは悪臭や天井の腐食、ダニの繁殖やアレルギーなどの健康被害も引き起こしてしまいます。
「もしかしたら、もう住み着かれてフンをされているかも…。」
というときは、コウモリを嫌いになる前に、私たち『みんなのコウモリ駆除屋さん』までお早めにご相談ください。
アブラコウモリの繁殖力は強い?寿命はどれくらい?
アブラコウモリの繁殖力は非常に強いです。
生まれてから10ヶ月ほどで繁殖可能になり、7月初旬に1〜4頭の子供を産みます。
生まれた子供は30日ほどで離乳し、巣から旅立っていきます。
断熱材のある屋根裏などはコウモリにとってはとても快適な住まい。
このような環境だとネズミ算的に(コウモリですが…)爆発的に増えることもあります。
アブラコウモリの寿命は雄で3年、雌で5年ほどです。
他のコウモリと比べるとやや短い寿命となっています。
特にオスは3年を待たずに1年ほどで死んでしまうことが多いようです。
オスは1匹で行動することが多く、天敵に襲われやすくなるからです。
では、天敵について詳しく説明していきましょう。
アブラコウモリに天敵はいる?
アブラコウモリの天敵は猛禽類やヘビなどです。
特にコウモリと同じく夜に活動するフクロウは身体が大きく、夜目もきき、飛行技術も高いです。そのため、コウモリにとっては最大の天敵と言えるでしょう。
アブラコウモリは時速7km〜15km、自転車と同じくらいのスピードでしか飛べませんが、フクロウは時速70kmほどで飛ぶことができます。
これでは勝負になりませんよね…。
絶対に出会いたくない相手でしょう。
一方ヘビは、コウモリが休んでいる時に忍び寄り、ガブッと丸呑みしてしまいます。
先にも少し触れましたが、コウモリが高いところにぶら下がるのは、ヘビから身を守るためでもあります。
アブラコウモリは冬眠する?
アブラコウモリは日本だとだいたい11月ごろ〜3月頃まで冬眠します。
暖かい場所に多数が集まっておしくらまんじゅうのような形をとって、冬眠することが多いです。
アブラコウモリが冬眠するのは、冬の低温と食料不足から身を守るためです。
冬眠は分かりやすく言うと省エネモードになること。
体温を下げ、心拍数や呼吸も少なくすることで活動を抑え、ひたすら眠って冬を越すのです。
冬を越したアブラコウモリは3月中旬〜下旬頃に目覚めてふたたび活動し始めます。
ちなみにですが、冬眠の期間中でも暖かい日には一旦冬眠から目覚め、活動することもあるようです。
また、都市部は寒さをしのげる場所が多く冬でも餌が豊富にあることから、冬眠をしないアブラコウモリも現れています。
こうして環境に適応することで、進化を重ねてきたのでしょうね。
コウモリは「鳥獣保護法」で保護されている!
私たちの身近に生息するコウモリですが、実は許可なく触れたり飼育したり、もちろん勝手に殺傷してはいけません。
なぜならコウモリは、「鳥獣保護法」によって保護されている生き物だからです。
鳥獣保護法とは正式名称を「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」といい、生物の多様性の確保や生物の保護、農林水産業の発展を目的に制定された法律です。
コウモリは害虫を食する益獣(人間の生活に利益をもたらす動物)とされており、さらに種によっては絶滅の危機にあるため、許可なく捕獲することはできません。
しばしば「コウモリの赤ちゃんが地面に落ちているんですが、捕まえてもいいですか?」といったお問い合わせもいただくことがありますが、これはNG。
許可なくコウモリを捕獲すると法律違反となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられてしまうのでご注意ください。
そのためコウモリを見かけても、勝手に捕獲するのではなく、家に侵入させない方向で対処していきましょう。
コウモリを害獣にしないために。家への侵入を防いで被害を予防
この記事でも紹介したとおり、アブラコウモリは家に集団で住み着きます。フンも大量になるため、最近は害獣として扱われることが多くなっています。
コウモリの被害は予防がとても大切です。
予防には、
- 家の中への侵入を防ぐ
- 家の周囲から追い払う
という二つの方法があります。
それぞれ詳しく紹介していきましょう。
家の中への侵入を防ぎたいときは
コウモリの侵入を防ぐには、コウモリの侵入口となりそうな穴を塞いでしまうのが一番です。
まずは侵入口となりそうな穴がないか点検し、もし穴があった場合はふさぎましょう。
コウモリは1cm〜2cmというわずかな隙間でも簡単に侵入してしまいます。このような穴は全て塞いでおくことが必要です。
穴は目の細かい金網や、シーリング剤を使用して塞いでいきます。
「点検してみたら既に住み着かれていた…!どうしたらいいの!?」
もし住み着いているコウモリを見つけた場合は、必ずふさぐ前に追い払うことが必要です。
そのまま塞いでしまうと中でコウモリが餓死してしまい、異臭やダニの発生源になってしまうからです。これはコウモリ、私たち人間、お互いにツライものになってしまいます…。
既に家の中にいるコウモリを追い払う方法や、注意点はこちらで詳しく解説しています。
ぜひご覧になってみてください。
家の周囲から追い払いたいときは
コウモリを家の周囲から追い払いたいときは、コウモリ用の忌避剤か、ネズミ用の忌避剤を使用します。
忌避剤は大きく分けると
- くん煙タイプ
- スプレータイプ
の2種類。
くん煙タイプは煙状の薬剤で追い払う道具で、『バルサン』をイメージしていただくと分かりやすいと思います。
屋根裏や天井裏など、広い空間に適しています。
スプレータイプはくん煙タイプよりも狭い範囲に、ピンポイントで強い匂いをつける道具です。
戸袋や外壁、シャッターの隙間、通気口などに適しています。
まだ住み着かれていない状態であれば、スプレータイプの忌避剤を外壁に吹き付けておくとよいかと思います。
コウモリを害獣としないためにも、しっかりと予防しておきましょう。
ちなみに、コウモリは鳥獣保護法という法律で保護されている動物です。
捕獲や殺傷を許可なく行うと法律を違反することになってしまうので注意してください…。
「うちは住み着かれていないかな。ちょっと心配…。」
「自分で点検できるか不安…。」
「既にフンの被害がある…。」
という場合は、こちらからお気軽にご相談ください。
まとめ
コウモリの生態や、コウモリ被害の予防方法について紹介してきました。
みなさんにもコウモリの面白さが伝わったでしょうか?
コウモリは非常に身近でおもしろい動物である一方、集団で家に住み着くことから害獣となってしまう可能性もあります。
すでにコウモリの被害が出ていたり、自分で点検するのが不安という方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
コウモリは蚊などの害虫を食べてくれる益獣でもあります。
コウモリと上手に付き合っていけるとよいですよね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事を監修したコウモリ駆除の専門家
石田 充(いしだ みつる)
空を飛べる唯一の哺乳類であるコウモリ。中でも私たちに身近なのは、「アブラコウモリ」と呼ばれる小型の種です。民家に集団で住み着いてフン被害をもたらすことがあるため、コウモリに侵入されてしまいそうな隙間がないか、確認しておきましょう。
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